BIGTREETECH MorPhlex フィラメント 90A-75A レビュー:靴印刷への期待と現実
3Dプリンターの世界は日々進化しており、特にフィラメントの素材開発は目覚ましいものがあります。今回、私はBIGTREETECHから新しく登場したMorPhlexフィラメント(90A-75A)を、主に靴の印刷という、ある意味で過酷な用途に焦点を当てて試してみました。このフィラメントは、その特性として「もつれ防止」「生分解性」「良好な靱性」を謳っており、従来のTPUフィラメントが抱える課題を克服する可能性を秘めていると期待されています。
開封と第一印象
まず、届いたフィラメントのパッケージングは、BIGTREETECHらしいしっかりとしたものでした。リールにはフィラメントが綺麗に巻かれており、確かに「もつれ防止」という触れ込みに期待を持たせるものでした。糸引きの少なさや、表面の滑らかさも好印象です。色のバリエーションも豊富で、デザイン性の高い造形にも対応できそうな点も評価できます。
印刷設定と挑戦
MorPhlexフィラメントの印刷設定は、他のTPU系フィラメントと比較して、若干の調整が必要でした。推奨温度はノズル210-230℃、ベッド100-110℃と、やや高めです。特にベッド温度は、剥離を防ぐために重要だと感じました。印刷速度は、TPU系フィラメントの常として、遅めに設定する必要があります。筆者は0.4mmノズルを使用し、当初は40mm/sから始めましたが、良好な結果を得るためには20-30mm/s程度まで落とす必要がありました。
「もつれ防止」については、確かに spool からの引き出しはスムーズでした。これまでのTPUフィラメントで経験したような、印刷中に突然フィラメントが絡まって印刷が中断するというトラブルは、MorPhlexでは一度も発生しませんでした。これは、長時間の印刷や unattended printing において、非常に大きなアドバンテージとなるでしょう。
靴印刷における性能評価
さて、本題である靴の印刷です。靴のパーツは、柔軟性、耐久性、そしてある程度の剛性も求められます。MorPhlexフィラメントの「良好な靱性」は、まさにこの用途に合致すると考えられます。
まず、サンダルの中敷きのような、比較的フラットで柔軟性が求められる部分の印刷は非常に良好でした。印刷されたパーツは、適度な弾力性を持ち、足の形にフィットしやすい印象です。また、TPU特有のベタつきが少なく、表面がサラッとしているため、靴下を履かなくても快適に着用できそうです。
しかし、靴のソールのような、より高い衝撃吸収性や耐摩耗性が求められる部分の印刷では、いくつかの課題が見られました。MorPhlexフィラメントは、90Aから75Aへと硬度が変化する特性を持っていますが、それでも従来のゴム素材と比較すると、衝撃吸収性やグリップ力においては譲る部分があるように感じました。特に、雨の日など滑りやすい状況での安全性を考えると、さらなる素材改良が期待されるところです。
また、「生分解性」という特性は、環境への配慮という点で非常に魅力的です。しかし、生分解性フィラメントは、一般的に耐候性や耐熱性が低い傾向があります。靴は屋外で使用されることも多く、直射日光や雨風にさらされることを考えると、長期的な耐久性については懸念が残ります。現時点では、短期間の使用や、屋内での装飾用途、あるいはファッション性の高いデザインの靴に限定されるかもしれません。
印刷物の質感と後処理
印刷された造形物の質感は、マットで落ち着いた印象です。TPU特有の光沢感はありませんが、それが逆に高級感を醸し出しているとも言えます。後処理としては、サポート材の除去も比較的容易でした。TPU系フィラメントでしばしば問題となる、サポート材との癒着が少なく、きれいに剥がすことができました。
まとめ
BIGTREETECH MorPhlex フィラメント 90A-75A は、その「もつれ防止」という特性において、TPU系フィラメントの使い勝手を大きく向上させる可能性を秘めています。靴の印刷という用途においては、中敷きのような柔軟性と快適性が求められる部分で高いパフォーマンスを発揮しました。生分解性という環境への配慮も特筆すべき点です。
一方で、靴のソールのような高い耐久性や衝撃吸収性が求められる部分、そして屋外での長期使用を考えると、現時点ではさらなる改良が期待されます。しかし、これはあくまで現段階での評価であり、今後の素材開発によっては、これらの課題も克服されるかもしれません。
BIGTREETECH MorPhlex フィラメントは、TPU系フィラメントの新たな選択肢として、また環境に配慮した印刷素材として、非常に注目に値する製品であると言えるでしょう。特に、もつれによる印刷中断に悩まされているユーザーや、環境負荷の低減を意識した造形を行いたいユーザーには、ぜひ一度試してみる価値のあるフィラメントです。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください

